当院では約10年前から睡眠障害外来を設けて診療を行ってまいりましたが、今年度新たに睡眠脳波室を開設しました。寝ている間のいびきや呼吸が止まってしまうことによる昼間の眠気、いわゆる睡眠時無呼吸症候群はたびたび世間で注目されることから有名ですよね。当院でもその診断や診療に力を注いてきました。その精密な確定診断には睡眠時ポリソムノグラフィー(PSG)という脳波・呼吸・筋電図等を同時に観察する検査が不可欠なのですが、検査技師の情熱によって県央地区として早々に導入でき地域医療の貢献できたことは素晴らしいことだと自負しております。しかし長年、睡眠障害について診療してくると睡眠時無呼吸症候群では説明できない極度な昼間の眠気を患っている患者さんに度々遭遇してきました。会議中だけにあらず、作業中や面と向かって他人と会話していても突然のように脱力して眠ってしまうらしく、会社を追われ職を転々として閉じこもって生活せざるを得ないケースも多くあるようです。睡眠時無呼吸症候群を除外して中枢性過眠症と呼ばれていますが、その代表的な病気がご存じの方も多いナルコレプシーです。ナルコレプシーの病態はヒステリーなどの精神疾患やてんかん発作などの鑑別が困難であることから、長年にわたり原因不明のまま放置されることも多くありました。しかし近年は、睡眠障害国際分類やその診断基準が明確にされたことで比較的容易に診断できるようになりました。そこで不可欠なのが反復睡眠潜時検査(MSLT)です。日中に繰り返し約5回の短時間の睡眠をとっていただき、その際の脳波・筋電図等を観察するというものですが、検査技師の高度なスキルと労力が必要なことから嫌厭する医療機関が多いのが現状です。そこで当院ではMSLTを積極的に施行できるように専用の睡眠脳波室を開設し、睡眠障害に悩む患者にさらにお役にたてるようになりましたのでここにご報告いたします。ナルコレプシーの日本人の有病率は700人に1名と世界的にみて最も高く、欧米人に比べて約3倍の頻度といわれています。発症年齢は1020歳台が多いとのことですが、不顕性で気づかずに生活されている方も多いようです。学生時分に授業中必ず寝ていて怒られる同級生いましたよね、この状況でよく眠れるなーなんてある意味感心していたこともありました。もしかするとナルコレプシーだったのかもしれませんね。あっ、僕もその一人でしたが、これは生活リズムの乱れによるものなのでナルコレプシーではありません(寝る子レプシー?)。

 

追伸;過眠症の原因はナルコレプシーだけではなく、特発性過眠症や遺伝的要素 他などもありますが割愛させて頂きます。

亡き父への想い

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当院の創始者である父親が1027日午前057分に他界した(享年85歳)。最期の入院となるまで医師として病院に通い続け、最期までいつもと変わらずに冗談をおり混ぜながらの笑いが絶えない外来診療スタイルは、さっきまで座っているのが精一杯の病人にはとても見えなかった。スタッフからは父親には老いるというアポトーシスとは無縁の存在に思えたらしい(笑)。四十九日が過ぎがた今日、思い出すのは父親の威風堂々とした存在感と怒鳴り声。まさに瑞宝章の勲章に値する医者だったのだと思います。お世話になりました患者様、各関係者の方々にはお礼の言葉も見当たりません。残念なことに自分にはその遺伝子の片鱗は引き継がれることはありませんでしたが、私も自分なりの医者としての人生を邁進頑張っていく所存です。皆様のご指導ご鞭撻をこれまで以上に賜りますよう心からお願い致します。

 

平成2712月末日

「第4回みとマラソン」がこのほど、水戸市の偕楽園公園の10キロコースで開かれ。高校生以上と知的障害者の男女8部門に約1500人が参加、健脚を競った。今回からは幼稚園児と小学生による「ちびっこマラソン」も同公園内特設コースで同時開催され、約1500人が参加した。自分は第1回から救護ボランティアとして水戸医療センター在籍中から参加している。今回は市内の医療機関の医師や看護師ら、県内の各消防本部からの救急救命士そして新たに応急手当普及員らにご協力頂き、計24名が救護ボランティアとして参加して頂けた。具体的には走路には約800メートルごとに自動体外式除細動器(AED)を持って待機、医師も自転車でコースを走り、ランナーに異変がないか見回り体調を崩したランナーの対応に備えた。走り終えたランナーが足を痙攣させ救護所にて応急手当を受ける場面も多くあり、今年も充実した救護体制を敷けたと自負している。また今回はちびっこマラソンが新たに開設されたことで転んで怪我をする子も数人いました、なかでも膝から流血しながらもトップでゴールした子が誇らしそうに手当を受けていたのが印象的です。

初めてのクリスマスコンサート開催

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先日12月22日は院内初めてのクリスマスコンサートを開催したところ、入院中の患者さんやご家族をはじめとして大勢の方にお集まり頂きました。当院には音楽に長けるスタッフは皆無に等しいのですが、初心者ばかりの中で希望者を募り数か月前から各楽器の練習をしてきました。私の本当にお恥ずかしいピアノ独奏はさておき(惨)、ハンドベルやメンズスタッフ10名超による合唱やギター演奏など、手作り感満載のコンサートは予想以上の大盛況となりました。酸素ボンベを片時も外せないのに車椅子でなんとか駆けつけてくれた患者さん、気管切開で声は出せないけれど鈴を大きく振って盛り上げてくれた患者さん。個々にいろいろな思いを感じながら最後まで参加者全員で一緒に歌ったクリスマスソングは忘れられない夜となりました。来年はもう少し精進して聞かせることができるコンサートにしたいと思っていますが・・どうなることやら(笑)。

丹野病院に赴任以来、慌ただしかった本年も平成26年ももうすぐ終わろうとしています。インフルエンザウィルスが猛威を奮いそうな予感がある今日ですが、皆様におかれましては来年も健康には十分留意し、幸多い年になりますように心から祈念致しております。

デング熱感染について

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先日より騒動になっているデング熱の感染についてお話しします。茨城県内の方が代々木公園にでかけた際に感染したとの報告が各医療機関にあがってきています。ご存じとは思いますが、デング熱は蚊が媒介するデングウィルスによる疾患で、アジア・中東・中南米・オセアニア等の世界の広範な地域で流行しています。蚊の種類はヒトスジシマカとネッタイシマカですが、強力な感染力をもつのはネッタイシマカです。国内問題になっているヒトスジシマカ(俗にいうヤブカ)の感染力は弱くヒトが感染してもデング熱を発症する頻度は10-50%といわれています。勿論、ヒトからヒトへ直接感染することはありません。症状ですが、潜伏期間は3~7日とされ、その後、発熱、発疹、頭痛、関節痛などの症状がみられますが、特に目の奥が痛くなるような頭痛が特徴的です。通常の場合は発病後2~7日で解熱し、そのまま治癒しますが、まれに重症化して出血傾向やショック症状がみられることがあるので高齢者や体力低下が著しい方は注意が必要です。治療は対症療法のみで特異的な治療法はなく、現在のところ抗ウィルス薬はありません。ヒトスジシマカは越冬することはないので来年になれば万事解決といいたいところですが、産卵された卵(産卵期は9-10月)にウィルス遺伝子が一部伝達する(経卵伝達)して孵化するという可能性もいわれており来年度も不安は続きます。ちなみに都心の温暖化でよくみかける地下水域から発生して越冬するチカイエカには感染力はないようなので心配しなくても大丈夫です。最近は蚊に刺されないためのグッズや薬品が多数出回っていますよね、ついつい衝動買いしそうです。

第15回老健施設レイクヒルひぬま納涼祭に参加して

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当院の連携施設であります老健施設「レイクヒルひぬま」の納涼会に初めて参加してきました。大杉太鼓おはやし保存会による威勢のよい呼び込みからはじまり、下石崎音頭保存会の伝統ある華麗な踊り、いつも各地でユーモラスな踊りを披露して会場を沸かせてくれる小浦あんばの会、最後はご存じ黄門ばやしでの盆踊り。車椅子の方も満面の笑顔で踊ってくれました。参加者は入所者以外にもご家族やボランティアが協力してくれて総勢300人近くが集まり盛大かつ本当に楽しい納涼祭になりました。世間では、お年寄りの面倒は在宅介護があたり前みたいな風潮がありますが自分は反対です。それぞれのご家族には他人では分かりえない苦労や諸事情があって当たり前です。これほど温かい納涼会を開催できるのは入所者様を支えるご家族に精一杯の愛情がなければできませんし、それを当たり前に支えてくださる地域の方々の温かい環境があれば何ら問題なんて生じないのではないでしょうか?自然の環境だけでなく本当に温かい人柄に囲まれた素晴らしいこの涸沼に一度遊びにきて下さい。

PM2.5から身を守るために (其のⅠ)

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PM2.5は直径2.5μm以下の微粒子の総称で、粒子が小さいために人間の気管支で除去されずに肺胞などに達して炎症を起こし、気管支炎やぜんそくなどの呼吸器疾患への影響が心配されるほか、肺がんリスクの上昇も懸念されています。中国では2013年1月頃より北京市を中心にPM2.5による大規模かつ深刻な大気汚染が断続的に発生するようになりました。その影響はわが国にもあるようで、西日本の広い範囲で環境基準を超える濃度が計測されています。ではPM2.5による健康への影響はどれくらいででるのでしょうか。環境基本法による環境基準値では長期基準で1年に15μg/m3以下かつ一日平均35μg/m3以下であることと示されていますが、健康への影響が出現する可能性が高く迅速に何らかの対応が必要となる基準は一日平均で70μg/m3以上、一時間値が85μg/m3を超える場合と示されています。何らかの対応、すなわちPM2.5から身を守るたまには屋内対策として不要不急の外出を避け、換気や窓の開封を最小限にすること、さらにはこまめに床に掃除機をかけたり、水拭きしたりすることも必要です。PM2.5の濃度が高い日は、洗濯物や布団は部屋干しにしましょう。外出時対策としてはマスクの着用が不可欠ですが、花粉症対策などで通常市販されているマスクではPM2.5の粒子は小さすぎて素通りしてしまいますので、小さな粉塵を捕集するためのDS1(防塵マスクの日本国家検定品)やN95(アメリカでの規格で性能を評価した品)以上の規格のマスクを使用することが必要ですが、マスク装着時は隙間が生じないように口鼻全体を完全に覆うように使用しないと、せっかく高価なものを買っても効果がえられません。また帰宅時は屋外で衣服をはたいて、付着したPM2.5をはらってから屋内に入ることや洗顔やうがいをして顔や喉についたPM2.5を洗い流しましょう。ところで、黄砂にもPM2.5μg/m3以下の粒子が含まれます。黄砂はNOX、SOX、硫酸塩や硝酸塩などの環境大気汚染物質と反応しやすいことから、特に発がん性が高くなる可能性が報告されています。

PM2.5の飛散分布予測についは日本気象協会HP「天気ガイド」が参考になさってください。

参考文献

PM2.5の脅威から身を守る 田中 茂 中央労働災害防止協会発行 

茨城医学会麻酔科分科会立ち上げのご挨拶

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平成25年、茨城県医師会学術部のご理解により茨城医学会麻酔科分科会として私どもの団体である茨城臨床麻酔ネットワークが認可されました.設立の背景には茨城県の困窮する医師不足があり(県内医師数150人/10万人,全国ワースト2位),そのなかでも麻酔科医師の数は僅か3.7人/10万人と極めて深刻な状況にあります.その大きな要因は絶対的な医師不足というよりは都心への麻酔科医師の偏在にあると考えられています.県内でみますと県南地区は都心に比較的近いだけでなく筑波大学病院が所在することから麻酔科医師はなんとか充足していますが,その他の地区に関しては県央・県北地区を筆頭として誠に寂しい状況です.そこで私どもは6年前から「茨城臨床麻酔ネットワーク(ICAN)」という学術団体を設立して定期的な学術集会の開催を主体として活動てきました. この目的は麻酔科医師どうしの情報交換にだけでなく日本麻酔学会の理念とする質の高い麻酔科医師の育成・先端的研究の傾聴・正しい知識の啓発と普及などの達成の寄与にあります.一致団結した学術活動を継続することで県内の麻酔科医師をアピールして新たな麻酔科医師を呼びこむことができる可能性やマンパワー不足から手が回らなかった救急医療や集中医療、疼痛・緩和医療などの領域においても麻酔科医師が大いに活躍し地元の医療に貢献できる日がくると信じています.今後さらに公益性の高い麻酔科の学会を目指して一致団結すべきと考え県医師会のお力をお借りしたわけですが,今後は県内全域に会員を募り医師以外のパラメディックの方々へも活動をアピールし,茨城県全体に会員を拡充していくことを目標にしていきたいと思います.皆様のご理解とご協力を頂きましてこの会が発展しますことを祈念してやみません.

最後に,茨城県医師会学術部のご協力を頂き,めでたく平成25年10月26日、第1回茨城医学会麻酔科分科会が開催できましたことを関係各位の皆様に心から感謝申し上げます.

平成25年吉日